○ケース2
氏名:マンド・ハリソン(女性) 年齢:25歳
アスペルガーの診断を受けた時期:2003年9月(24歳)
1 今おつき合いしていますか?
 はい。現在の彼とは三年半続いており,八ケ月前に結婚しました。
2 これまでに,おつき合いしたことはありますか?
14歳のときから,いつもだれかと交際してきました。学校が終わるとすぐに彼氏のところに行くので,学校の外では会えないと友人が不満げでした。思いかえすと,多くの仲間と交流するより,対一の関係が安心できたので,彼氏と一緒にいたかったのでしょう。
3 アスペルガーは相手との関係に影響を与えましたか?
 私は,いつも精神的に不安定なため,相手から十分な安心感を得て,初めて恋人を信頼します。また,自分なりの方法で物事に集中したいので,十分な一人の時間も必要です。このような態度は,“熱しやすく冷めやすい”タイプとしてみられ,一方的で偏ったつき合い方をすると思われていたはずです。診断を受けてから,自分を理解しやすくなり,交際もずっと楽になりました。私も夫も,だれかになろうともがく私でなく,ありのままの私を受け入れることができました。
4 アスペルガーがおつき合いに与えた悪かった点
 アスペルガーは,これまでの交際全てに同じ弊害をもたらしました。つまり,私はパートナーの感情を“感じとる”ことができず,唯一頼れる手段であることばは,感情をくみ取るのに十分でないからです。愛情と思いやりを求めては彼氏を困らせ,一方彼氏からそれらを求められても気づかず,追い詰められて逃げ出したくなります。
 過去には,パートナーを“自分のところに引き寄せる”ための,心理ゲームに巻き込み,駆け引きしていたように思います。次第にエスカレートしていき,山あり谷あり退屈な瞬間などない,波乱万丈で不安定な関係に陥りました。最後に,私は精神的な限界に達し,自分の健康のためにすっぱりあきらめ別れました。
 自分がアスペルガーであることを知り,ありのまま受け止める心の自由を得てから,以前のように激しく流れに逆らってまで闘う必要はないと感じています。きっと,また穏やかざる関係になっても,以前のように手に負えないものにはならないでしょうし,それも私の性格のせいではなく特性のためだと互いに理解しています。
5 アスペルガーがおつき合いに与えた良かった点
 夫は,私を誠実で表裏がなく正直だと言って尊敬してくれます。彼は,嘘をつかず人をだまさず,いつも本当のことを言う私を長年見て,信頼してくれたそうです。努めて私に話しかけてくれたので,私も次第に彼を信頼するようになりました。
 私は,独特の一風変わったユーモアのセンス(夫に言わせると,私特有の言語表現)を持っており,彼はそれを評価し,喜んでくれます。夫は,私の考え方に影響を受けたらしく,二度と定型発達者とつき合うことはないと言っています。定型発達者にとって,アスペルガーとの交際は難しいことかもしれませんが,その報いは十分得られるはずです。
6 おつき合いがうまくいくために必要とするサポート
 アスペルガーを理解することがカギとなります。アスペルガーの人とそのパートナーにとっで情報は非常に有効で,“疾患”“苦痛”“障害”といったことばからくるマイナスイメージを払拭してくれます。アスペルガーの弱みばかりでなく強みにも焦点を当て,バランス良く描写されることが必要です。また,アスペルガーのパートナーは,同じ立場の人々の集まるネット上のコミュニティーに参加すると,不安が解消されるでしょう。“生の声”に触れるこの種のサポートでは,書物からは得られない生きた情報ヤアイデアを入手できます。また,一回きりの交際経験ではわからない,アスペルガ一間の違いもわかります。
7 アスペルガーの人がおつき合いをするうえで,性別によって違いがあると思いますか?
 社会がジェンダーに対して期待するふるまいのため,女性の方が交際の機会が多いと思います。一般社会では男性よりおとなしい女性が好まれ,この弱々しさは男性の保護能力をかき立てると言います。今の時代,静かでシャイなのは男らしいとみなされず,アスペルガ一男性を交際対象としてみる気にすらなれない女性もいます。